2010年8月18日水曜日

家森幸男先生の健康長寿の食生活

カスピ海ヨーグルトを日本に普及させたことでも有名な家森幸男先生。今も武庫川女子大学健康開発研究所所長として、健康長寿の食生活をテーマに世界調査を続けておられます。この先生の総説がアンチエイジング医学会雑誌2010 Vol.6 No.4 に載ってましたので紹介します。

題名は、世界調査からみた健康長寿の食生活ーアボリジニから学ぶー  です。

結論から言うと、健康長寿の国の人々の食べている食材は、魚と大豆とナッツ類。成分で言うとタウリンとマグネシウム。

逆に短命な国の人々の食べている食材は、塩、精白米、精白小麦、肉、大量の脂肪、つまり、食生活の都市化、工業化、欧米化が進行している国が食べている食材です。

要するに肥満の多い国、代表的地域で言うとアメリカ、現在のオーストラリアのアボリジニ民族の地域、カナダのニューファンドランド島です。

アボリジニ民族は、アフリカで誕生した人類が地球上を移動し、日本より遥か遠いオーストラリア大陸に上陸するまで飢餓に打ち勝って生き延びてきました。

このような困難な条件を克服してきた過程で、優れた倹約遺伝子を有して来たわけです。

この民族が、飽食の時代になって伝統食を失い、欧米化した食生活に急激に変えてきたから、身体が正常に代謝できずに心血管疾患を中心とした生活習慣病が沢山出現し、短命になったと言われております。

日本人も然りです。倹約遺伝子をしっかり持っています。だから、欧米人より糖尿病、脳梗塞、高血圧などの生活習慣病になり易いのです。

もともと、アボリジニ民族は主食がマカデミアンナッツ、主菜は魚介類でした。つまり、ナッツからはマグネシウムを摂取し、魚介類からはタウリンを摂取してきたということです。


一方、長寿国である中国貴州省の貴陽という地域、ミャオ族の住んでいる地域は主食が大豆、主菜は湖から採れる淡水魚、大豆はマグネシウムの豊富な鍾乳洞の石灰を用いて豆腐を作ります。ミャオ族は心血管疾患が少なく長寿です。

日本も、第二次世界大戦前までは、シジミのみそ汁に野菜、ひじき、おから、雑穀米の食事でした。京都では特に、出汁を効かした塩分控えめの薄味が主流です。沖縄も長寿県と言われておりましたが、最近、食の欧米化で肥満者が増加しランキングを下げております。

私的解釈も入れますと、肥満にならない食生活、つまり精白米、精白小麦、炭水化物、糖分の過剰摂取は避け、魚と大豆と野菜を中心とした食事が倹約遺伝子所有の日本人には適しているということですね。

2010年8月4日水曜日

トランス脂肪酸とは?

さて、アンチエイジングにとって、油は大変重要なキーワードになります。油は酸化されやすく細胞の老化を早めてしまうからです。

だからといって油の摂取を減らせば良いということではありません。油は細胞膜やホルモン、ビタミンDの原料になるので身体には欠かせないものだからです。

要は良質の油を必要最小限に摂取せよということになります。

最悪な油はトランス脂肪酸。欧米では、食べるプラスチック、常温でおいても腐らない油、ネズミも口にしないと、最悪な油の代名詞にされています。

天然に存在する脂肪酸は、液体でシス型という立体構造を形成してますが、これに水素添加をすると、常温でも半固形で、加工しやすく保存性の優れたトランス脂肪酸ができるわけです。また、植物性油も高熱処理する時もトランス脂肪酸が発生します。

トランス脂肪酸の悪玉といわれる所以は、動脈硬化作用、発がん作用があるからです。トランス脂肪酸は、血管にコレステロールを沈着させる悪玉(LDL)コレステロールを増加させ、その一方血管からコレステロールを運び去る善玉(HDL)コレステロールを低下させるといわれております。それによって動脈硬化が加速し心筋梗塞などになりやすいと言われています。

先進国ではすでにトランス脂肪酸を含む食品の一部は販売禁止、ドイツはトランス脂肪酸を含むマーガリンは完全販売禁止です。ニューヨーク市も含有食品の販売を禁止、日本は残念ながら行政的な規制はありません。

一部食品メーカーは自主的に含有量を低く抑える取り組みをしていますが、ファストフードに使用する油はまだ、トランス脂肪酸の含有量は多いようです。

家庭内でも身近にあるトランス脂肪酸の多い食品を挙げますと、マーガリン、クッキーなどの西洋菓子、コーヒーフレッシュ、インスタント食品、冷凍食品、何度も加熱されるフライ物などです。

基本的に訳のわからない油ものは口にしないことが賢明かもしれません。

現在のところ、推奨される油は、オメガ3脂肪酸といわれる種類でアルファリノレン酸(エゴマ油、アマニ油に多く含有)やEPA、DHA(イワシやサバなどの魚油)やオメガ9脂肪酸(オリーブオイル、グレープシードなどに多い)が挙げられます。

10年前にリノール酸神話として推奨されていたオメガ6脂肪酸(紅花油、大豆油、ひまわり油など)は、現在ではアレルギー性疾患や自己免疫疾患を悪化させるとして、取り過ぎに注意したほうがよいということになっています。これも無責任な話ですが、医学の進歩とともにあえなく神話は崩壊したわけです。